2018年中学校の「道徳」教科書採択

 

 今年は中学校の道徳教科書採択の年です。中学校の道徳教科書は、8社の教科書が検定に合格し、その8社からこの夏、来年の4月から始まる授業で使用する教科書が選ばれます。

 

藤沢市では市内20の中学校で、教科書の巡回展示が始まります。また市役所でも展示会が行われます。誰でも会場に出向き、教科書を読み、意見を書くことができます。昨年の小学校道徳採択から、市民の意見の可視化が進みました。市民の意見は冊子化され、資料として教育委員に届けられます。

 

 

 

すべての科目の筆頭に位置付けられていた「修身」が、戦後、廃止され、その柱であった教育勅語の失効決議も国会で行われました。1958年、教科外活動(領域)として道徳の時間が設けられましたが、教科ではありませんでした。

 

 

 

2次安倍政権発足直後に組織された「教育再生実行会議」は、第一次提言として「いじめの問題などへの対応について」を発表。その第一の柱が道徳の教科化でした。この提言を受け、学習指導要領の改訂が行われ、「特別の教科道徳」となりました。教科となったために、教科書を使用し、評価をしなければならなくなったのです。ただ文部科学省は、今回の学習指導要領及び解説書で、「読み物道徳」、価値を教え込む道徳から「考える道徳、議論する道徳」への転換を図ることを目指すとしています。

 

 

 

学習指導要領「第3章特別の教科道徳」4つの大項目と22の小項目(徳目):中学校

 

主として自分自身に関すること

自主、自律、自由と責任/節度、節制/向上心、個性の伸長/希望と勇気、克己と強い意志/真理の探求、創造

主として人との関わりに関すること

思いやり、感謝/礼儀/友情、信頼/相互理解、寛容

主として集団や社会との関わりに関すること

遵法精神、公徳心/公正、公平、社会正義/社会参画、公共の精神/勤労/家族愛、家庭生活の充実/よりよい学校生活、集団生活の充実/郷土の伝統と文化の尊重、郷土を愛する態度/我が国の伝統と文化の尊重、国を愛する態度/国際理解、国際貢献

主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること

生命の尊さ/自然愛護/感動、畏敬の念/よりよく生きる喜び

 

 

 

小学校では今年の4月から授業が始まっています。「特別の教科道徳」となり、教科書が使用されています。従来道徳には背景となる学問がないと言われています。その結果、検定に対しても反論する根拠となる研究もないとされ、まさに文科省、検定作業を「忖度」する教科書ができあがってしまっています。実際、検定では、学習指導要領の価値項目を網羅的に取り扱うことを求める検定意見がつくなど縛りが強く、今回、中学校で採択の対象になっている8社の教科書はいずれも問題を抱えていると言われています。教科書採択に当たっては、子どもたちに日々接して授業を実際に行う現場の中学校の先生方の意見が尊重されるべきです。しかし道徳は「しつけ」、徳目の押し付けでよいと考える「専門家」に任せたままでよいのでしょうか。未来をになう子どもたちの健やかな成長を願い、主体性を持った個人、主権者を育てるという観点から、よりましな教科書とはどんな教科書か、ご一緒に考え、保護者、市民も意見をあげていきましょう。その参考となる資料を提供できるようにミニ学習会を企画しました。ぜひご参加ください。

 

 

 

 

 

2017年小学校の「道徳」教科書採択

 

小学校で来年(2018年)4月から、中学校で20194月から「特別の教科道徳」の授業が始まります。第2次安倍政権発足直後に組織された「教育再生実行会議」が第一次提言として「いじめの問題などへの対応について」を発表。その第一の柱が道徳の教科化でした。昨年3月の学習指導要領の改訂を受けて、現在小学校の教科書採択が進められています。

 

 すべての科目の筆頭に位置付けられていた「修身」が、戦後、廃止され、その柱であった教育勅語の失効決議も国会で行われました。1958年、教科外活動(領域)として道徳の時間が設けられましたが、教科ではありませんでした。今回の改定で教科となったために、教科書を使用し、評価しなければならなくなりました。

 

 文部科学省は、今回の学習指導要領及び解説書で、「読み物道徳」から「考える道徳、議論する道徳」への転換を図ることを目指すとしています。

 

学習指導要領「第3章特別の教科道徳」に示された4つの大項目と22の小項目(徳目) 

主として自分自身に関すること

善悪の判断、自律、自由と責任正直、誠実/節度、節制/個性の伸長/希望と勇気、努力と強い意志/心理の探求

主として人との関わりに関すること

親切、思いやり/感謝/礼儀/友情、信頼/相互理解、寛容

主として集団や社会との関わりに関すること

規則の尊重/構成、公平、社会正義/勤労、公共の精神/家族愛、家庭生活の充実/よりよい学校生活、集団生活の充実/伝統や文化の尊重、国や郷土を愛する態度

主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること

生命の尊さ/自然愛護/感動、畏敬の念/よりよく生きる喜び

 

 小学校の教科書は8社の教科書が検定を合格しており、全国の教科書採択地域単位で、8月までに1社を採択することになります。1年生から6年生まで同一の教科書会社の教科書を使用します。

 

検定で「パン屋さん」を「和菓子屋さん」に変更して合格したことなどが新聞で報道され話題になりましたが、多くの教材が、徳目を学ぶために設問を重ねているだけの構成になっており、掲載教材も副教材として使用されてきた素材や文科省の発行している「私たちの道徳」を転用したものが多く、全般に「考える道徳」「議論する道徳」からは遠いという印象です。

 

 従来道徳には背景となる学問がないと言われ、その結果、検定に対しても反論する根拠となる研究もないとされ、まさに文科省、検定作業を「忖度」する教科書ができあがってしまっています。どういった教科書が、子どもたちがより深い、より意味ある学びができるものなのか、どういった観点から選べばよいのか戸惑うばかりです。

 

全国の小学校で来年の4月から道徳の授業が始まり、担任は子どもたちに評価をつけなくてはならなくなります。道徳は「しつけ」、徳目の押し付けでよいと考える「専門家」に任せたままでよいのでしょうか。より良い教科書とは、一緒に考えていきましょう!